16 エピローグ

――おまけのお話です。ほのかと敦士の10年後は…?――


ほのかは自身で思い描いていた未来図よりも少し早く、妻となり二児の母となった。


「ひよりも、パパとおにーちゃんと どーじょー いくぅー。
 からて やりたいんだもん!」
家中に響き渡る声で駄々をこねる3歳の女の子は、ほのかの娘。
「日和(ひより)、そんなこと言わないの。ほら先生がもうすぐいらっしゃるのよ」
「やだ やだー」
ほのかが必死で説得しても、日和はそれを聞かなかった。

「どうしたんだ?」
そんな二人の声を聞いて、ほのかの夫であり、日和の父である敦士が長男の英太(えいた)と一緒に傍に来た。

「あ、パパ。日和がピアノの時間なのに道場に行くって聞かないの」
「パパと道場行くか?」
日和を抱き上げて、敦士は言う。
「うん!」
敦士の言葉を聞いて、急にご機嫌になった日和を見たほのかは呆れた。
「日和ー」

「しょうがないよ。うちには音楽の血が流れてないんだから」
初めから日和はピアノに興味がないことを薄々解っていた ほのかは
敦士にずばり言われてしまい、もう諦めるしかないのかなと思った。
「ピアノの先生に何て言おう…」
「ほのかがピアノ習えば?」
「いいの!?」
思ってもいない敦士の言葉に、ほのかの顔はパッと明るくなった。
そんな彼女の顔を見た敦士は
「いいよ。昔習いたかったんだろ」
と、何年経っても変わらない愛らしい笑顔を見て思わず目尻を下げる。
「うん。あっちゃん大好き!」
ほのかは敦士の腰に抱きついた。
「日和は空手頑張るか?」
「うん!パパだいすき!」
日和が父親にギュッとしがみつくと
「ずるい! ぼくも!」
英太も敦士の足に抱きついた。

「おーい。ピアノの先生がいらっしゃったぞ」
そして玄関の方から、ほのかの祖父の呼ぶ声が聞こえた。

「はーい」

「ほらお前らは道場行くぞ」
「はーい」


それから、毎週土曜日の午後になると
ほのかが弾く たどたどしいピアノの音の中、親子3人と曾祖父が道場で空手をするのだった。


おわり

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番外編としてクリスマスのお話を書きました。【こちら】からどうぞ。


2006-08-04


最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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