15 Destiny


目を覚ますと、あっちゃんはもう起きて着替えていた。
そんな後ろ姿を見つめていると、私が起きた気配を感じたのか振り向いて
ベッドに腰を下ろした。

「おはよう」
「おはよ…」
「眠れた?」
「うん…」

恥ずかしくて顔が見られない…。
タオルケットをかぶると、その上からぎゅうっと抱きしめてくれた。
下半身に残る違和感が、昨日の夜のことを思い出させる。
確かに痛かったけど、痛さよりも幸せの方が大きかった。

「つーか、コレ苦しくない?」
パッとタオルケットを剥がされて、あっちゃんはまた私の唇を奪う。
こんなにギュッとされてるとドキドキに気づかれてしまいそうで
体を少し離すと、自分の生まれたままの姿が丸見えになってしまう。
クルッと背中を向けると、今度は背中にちゅっと唇を押し当てた。
そんなことをされると、そこから溶けていきそうになる。

「ほのか…?」
「うん……」
「大好きだよ」
「うん。私も大好きだよ…」

それから後ろから抱きしめられた形で、しばらくこの安らかな朝を過ごした。

初めて二人で迎えた朝は、カーテンから差し込む光がキラキラ輝いてて
愛が満ち溢れてる、そんな朝だった。
そして私は決心をした――。



夕方。
おじいちゃんが帰ってきて、二人で作った夕飯をテーブルに並べた。

「おっ、すごいな」
お皿に盛ってある料理を見て、おじいちゃんは驚いていた。
そりゃあ、驚くよね。
二人で図書館に行って、初心者用のレシピ本を借りてきて一生懸命作ったんだから。

「おじいちゃん。私ね、空手はやめない。やっぱり空手が好きだから。
 それからね、私はおばあちゃんやお父さん、お母さんみたいに、おじいちゃんを残して死なないよ。
 おじいちゃんが、もっとおじいちゃんになったら、私はここの道場を継ぐよ。
 で、そこには あっちゃんもいてほしいと思うんだけど…」

今朝、決心したことを おじいちゃんに報告し、あっちゃんの方を見ると「うん」と頷いてくれた。

そんな私達を見たおじいちゃんは一瞬驚いていたけど、
「そうか、それは頼りになるな」と優しく微笑んだ。



ねぇ、運命ってどこまで信じる?

私のお父さんとお母さんが出会ったことも
小さな私を残してこの世を去ってしまったことも運命だったのかな?
おじいちゃんに育ててもらって、空手を身に着けて
そしてあっちゃんと出会ったことも運命だったのかな。
今まで軽々しく「運命だ」なんて口にしてたけど
すべて運命で決められているのなら、それにただ流されるまま生きていくしかないの?ってそう悩んだこともあった。
でもね。
運命なんて、占いと一緒じゃない?
いい事も悪い事も、思いたい事だけ「運命」にすればいい。

ただ一つはっきり言えるのは、あっちゃんと私が今こうしているのは結ばれる運命だったから。
だから、その運命の人と未来に向かって一緒に歩いて行くんだ。

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2006-08-04



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