一歩だけ前へ
(WEB拍手お礼画面より)


一つうまくいかないと、他のこともなんだかうまくいかないような気がして
自分では気付かないうちに笑うことさえもなくなっていた。

毎日同じ時間に起き、同じ電車に乗る。
月曜日から金曜日まで同じことのくり返し。

当たり前の毎日が当たり前すぎて、少し嫌になる。

「会社、辞めようかな…」

朝のラッシュの中、ぽつんといる自分がとてもちっぽけに感じた。

いつも向こうのホームに停まってる、少し変わったデザインのあの電車。
何ていう名前で、どこに行くのだろう。
飛び乗っちゃおうか…。
なんて、出来もしないことを考える。

会社を辞めることも出来やしない。
辞めて次はどうするの?
もう一人の自分が問いかけてくる。
私には一歩踏み出す勇気もなくて、きっとまた何をしてもうまくいかないと思った。

人ごみに流され、そして結局いつもの電車に乗る。

そっか…、私だけじゃない。
みんな同じ毎日をくり返している人がほとんどだ。


会社のあるビルに入ると片思い中の彼がいた。
「おはよう」
「おはようございます」

「今日は朝から天気がいいね」
「はい」

挨拶のあと、少し天気の話題を口にする彼。
これもまた毎日同じだ。


「もしよかったら、今日2人でお昼一緒にしない?」
「え…?」
私の「毎日」にはなかったその言葉に、自分の耳を疑った。

おずおずと顔を見上げると優しく微笑んでいて
「……はい!」
思い切って返事をすると同時に胸が高鳴った。

ああ…私はやっぱりこの人が好きだ。
彼に会える日々を大切にしよう。
好きになってもらえるように努力をしよう。
そしていつか自分の想いが届いたらいいな。

彼と並んでランチへ向かう途中、久しぶりに見上げた空は真っ青で、とても澄んでいた。


 end...



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 2012-7-16



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