こちらは、めかぶ様からいただいた作品です。 大雅と百香の結婚が決まった後の、二人の日常を書いてくださいました。 著作権は、めかぶ様にあります。無断転載等は絶対にしないでください。 |
「Tシャツ」 空が青い。 床にぺたりと座りテーブルに寝そべって、百香はベランダの外を眺めていた。 大きなTシャツが揺れている。 テーブルの上の汗をかいたグラスの中で氷がカランと鳴った。 昨日、あのTシャツを着て一緒に歩いた大雅の姿を思い出す。 百香をすっぽり包んでしまうかのような優しい笑顔。 百香に向けられる笑顔はあのGW以来、今も変わらない。 − 夢かも…と思ったこともある。なんだか今でも信じられない。 − 私を救ってくれた彼は今も側にいて私を守ってくれている。 − 幸せ…ってこういうこと? 「何をぼーっとしてるの?」 突然、背中から抱きすくめられて声が降ってきて驚いた。 「ひゃあっっ!」 「玄関開けたのも気がつかなかったの?危ないなあ。窓の外がどうかした?」 「んー、いい天気だなぁと思ってただけ」 大雅が百香を抱え込むようにして座ると振り向いた百香の額に小さいキスをした。 「洗車してきたよ。これで泥だらけじゃない車で百香の実家に行ける」 百香はちょっと顔を赤らめて、ふふ…と笑う。 大雅がはじめて百香の両親に会いに来てくれる。 「緊張する?」 「うーん、さすがにちょっとね」 「大丈夫。大雅は私にはもったいないくらいだもの。うちの親の方が恐縮しちゃう」 「何言ってんの」 大雅は百香の頭をくしゃっとした。 − 幸せってことだよね。 背中から回された大雅の腕を抱きしめて、百香はまたベランダのTシャツを見る。 − 今あなたが着ているそのシャツも洗ってあげる。 − またベランダに干したらこうして眺めよう。 − その度に幸せを感じるから。 − 特別なことなんかなくていい。 − こんな小さな幸せを感じるだけでも胸がいっぱいになってしまうから。 − でもあなたはきっと、もっと幸せにしてくれようとするから私の手から溢れてしまいそう。 こぼれ落ちてしまわないように、しっかり胸に抱きしめる。 大雅の腕を抱きしめた手にぎゅっと力を込めたら、大雅も背中から私を抱きしめてくれた。 − ふたりでしっかり抱きしめよう。 − この幸せがこぼれ落ちてしまわないように。 ベランダのTシャツが風に揺れて手を振っているように見えた。 まるでふたりを祝福してくれているように。 (END) Copyright (C) 2006 Mekabu All Rights Reserved. 屋上目次へ
「屋上」の二人のイメージにピッタリ…いえ、それ以上に素敵な作品にしてくださいました。 特に百香のモノローグなんてうっとりです。 大雅と百香をキャラクターを大切に扱ってくださって感謝の気持ちでいっぱいです。 めかぶ様、本当にありがとうございました。 |